将来価格を比較対象とする二重価格表示の執行方針について

・発表者:法務部会部会長 高橋善樹弁護士

・概要:
020年9月に「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針(案)」が消費者庁から公表され、9月~10月にかけてパブリックコメント募集が行われました。この(案)は最終方針ではないものの、当セミナーでは、これを材料として通販事業者への影響を検討しました。

消費者庁が持つ問題意識として、消費者意識の調査結果から「将来価格についての信頼性が非常に高い」ことが挙がっています。今回のセミナーでは、1)消費者庁の問題意識、2)執行方針のポイント、3)将来価格での販売と媒体の問題、の3点について高橋弁護士による解説が行われました。

1)では、守る気もない将来価格表示を気軽に示しているケースも多いことから、消費者庁は厳しい方針で臨む方針であるとされています。また、「将来価格」は有効な販売促進方法であることは否定できないものの、過去価格の「8週間ルール」ように明確な証拠があるわけではなく、販売実績がないという点で、“潜在的な危険性”が内在していると指摘されています。その危険性があることから、販売期間については、セール価格以上の価格にて販売する期間を最低2週間以上設けることが必要であり、将来価格での販売期間が明示されている場合については、不当表示に該当しないとの考えとなっています。
2)については、将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示は、不当表示につながるおそれが本質的に内在している点を重視。表示した将来の販売価格で販売することが確かな場合以外は、基本的に行うべきではないというスタンスだとしています。基本的な考え方として、合理的かつ確実に実施される販売計画を有しているか、セール期間後に表示どおり将来の販売価格で販売したかがポイントであると指摘。セール期間経過後に将来の販売価格で販売していない場合には、セール期間中の表示について違法性が推認できるため、原則として表示開始時点から有利誤認表示として取り扱われるとされています。
3)については、 テレビショッピングやネット販売など媒体の違いについて現在の執行方針では取り上げられていないため、販売場所となる拠点や時間差、継続性などに関して課題があるとのコメントがありました。

高橋弁護士によれば、通販事業者にとっての一般的な販売形態の意味、媒体の違いについての評価は明らかにされていないなどの点はあるものの、将来における販売価格での販売期間が具体的に示された点は行動指針として評価できるとのことでした。

※【ご参考】パブリックコメント結果を受け、その後12月25日に消費者庁から以下の発表がありました。
「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針(案)に関する意見募集の結果の公示及び同執行方針の成案の公表について」
https://www.caa.go.jp/notice/entry/022622/