「“役に立ちたい人”の気持ちを後押しするソーシャルアクションサービス『May ii(メイアイ)』の現状と今後の可能性」

<発表者>
松尾 佳菜子 氏
大日本印刷株式会社ABセンターコミュニケーション開発本部 域創生事業推進ユニット 事業推進部 ソーシャルサービス開発グループ

去る2月10日に、WEBコミュニケーション研究部会の2020年度第3回定例会が開催されました。
今回のテーマはアプリを軸にしたサービス「“役に立ちたい人”の気持ちを後押しするDNPソーシャルアクションサービス『May ii(メイアイ)』の現状と今後の可能性」。

「May ii」は大日本印刷株式会社(DNP)が開発したアプリです。
移動に困っている人と手助けしたい人をつなげたり、街なかの困ったことを学んだり、日常のちょっとした時間でできる貢献活動を地域市民に推奨、称賛することで行政や事業者に頼り過ぎない地域共生社会を実現できる「市民が主役になるコミュニティプラットフォーム」で、「助け合い行動を促進・可視化」することができます。

2018年度に幾多の実験を重ねて、2019年7月にリリースしました。今回のご講演では、May iiの発起人である松尾氏に、開発の経緯と現状、およびダイレクトマーケティングへの適用を初めとする今後の展開について語っていただきました。

実現したいこと(ビジョン)は、「社会全体の活動総量の増加」、果たすべきミッションは「気軽にMay I help you ? を言える日本人を増やす」ことだそうです。

ファクトとして掲出いただいた中に「世界手助けランキング138位」というデータがありました。いつも思うのですが、日本はこうした心の豊かさ的なランキングではいつも先進国の中で下位常連。経済大国になっても心は後進国なのではないかと。
メイアイに秘められたビジョンを実現するには、こうしたソーシャルアクションが気軽に広まることなのだと思いつつも、大人にとって行動変容するにはハードルが高いと感じてしまいます。現在、メイアイを、共生社会を考えるための教材と捉えて、展開エリアの高校や大学と共に地道に活動を広げていることは大変興味深いと感じています。

また、自分のちょっとした手助け活動が社会に貢献できていることを上手に可視化すること、他者への手助けモチベーションの促進などが継続されていくことが信条だと感じますが、活用するためのリテンションの仕組みもなかなかハードルが高いと思っています。
ただし、すでにUBERなどのギグエコノミーにおいて取り入れられている評価システムを組み込むことで親切の押し売りや悪意の人間の活用などのリスクを低減することはマストになるのではないかと。

手助け行動ができない理由は「周囲の困りごとに気付けない(気づく機会がない)」「何をしたらいいのかわからない」「自分じゃなくてよくないか?」こういうことが誰にでもあるので、メイアイを通じてこのあたりのきっかけが解消されると日本人に乏しいダイバーシティコミュニケーションが形成されていくと思います。

⇒社会のための”ちょっとした行動”を毎日のあたりまえにする
・手助け促進機能
・ミッション機能
・ログ可視化機能
これらの基本要素に加え、自治体等との取り組みを活性化し、日本人の「無関心」からの脱却を目指すことがメイアイの使命だと感じました。
DNPにおいてサービスデザインを生業としている松尾さんのお話の中で、日本人と欧米人の人助けに対する意識の違いというのも興味深く、人助け心が根付いていない日本だからこそ、というサービスなのかなと感じつつ、行動評価型マーケティングの必要性や立ち位置などを考えさせられる講演でした。

人にやさしい街づくりに貢献するアプリとしてますますの成長を応援しています。
(リポート担当 大西理)