「期間限定広告」の不当性に係る試考

<発表者>
矢野 誠二氏(広告リスク研究所)

・概要
期間限定販売の広告では、値引きの幅を示すために用いる比較対照価格が不当な価格である場合等は有利誤認表示とみなされる。さらに、有利な条件が適用される期間表示が実態と異なることで、当該取引が著しく有利と消費者を誤認させる場合も不当表示とみなされ、措置命令も少なからず発出されている。
前者の価格の不当性については、ガイドライン等で判断基準が示されているが、後者の期間表示の不当性については、セール期間の延長やセールの繰り返しについて、不当性を判断する指標が示されていない。
そこで、本発表では、セール期間を延長したり、短期間で繰返したりする過程で、不当な比較対照価格による二重価格表示の状態に陥ることがあることに着目し、その視点から、セール期間に関する表示が不当表示となる期間延長や繰返しの要件について検討した。

期間限定価格には、“過去の販売価格を比較対照価格とした二重価格表示”と“将来の価格を比較対照価格とする二重価格表示”の二つの要素が含まれる。
過去の販売価格を比較対照価格として期間限定値引きをする場合、セール再開時に「通常価格」が適正な比較対照価格としての要件を満たしていなければならない。なお、限定販売の期間が明示されていれば、期間中に要件を満たさなくなることは差し支えない。
セールを繰り返す場合も、セール再開時に表示する「通常価格」が適正な比較対照価格としての要件を満たすように休止期間(通常価格での販売期間)を設定する必要がある。具体的な措置としては、限定期間終了後、常に、直前の限定期間を上回る日数だけ「通常価格」による販売を行うことがある。
期間限定価格を将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示と捉えた場合、原則として期間の延長は認められず、〝新発売記念セール“などセール期間以前に販売実績がない場合はセール終了後2週間以上比較対照価格で販売しなければ不当表示とみなされるリスクが否定できない。
過去の販売実績を比較対照価格とした場合も、“今だけ○○割引”といった、セール終了後には対照価格で販売する旨を強調して、セール期間中の購入を強く促す広告表現を避け、期間延長や繰返し実施する可能性について表示することで、消費者の誤認を防止することが望ましい。