学会賞

第10回学会賞

学会賞には、その前年度の学会員の業績、実績に対して贈られる学術賞(1名)と奨励賞、特別賞、田島記念賞がありますが、今回は残念ながら、学術賞については該当者はありませんでした。

しかし、日本におけるダイレクトマーケティングの優れた研究業績および過去に遡った著作等に授与される「特別賞」につきましては、審査委員の先生方と厳正に審議させていただきました結果、早稲田大学名誉教授 亀井 昭宏氏に決定いたしました。

また、日本におけるダイレクトマーケティングの研究および教育への啓蒙に資する著書に授与される「奨励賞」につきましては、「衣類商品eショッピングにおける知覚リスク構造に関する研究―日本と韓国の消費者文化を中心に―」を書かれた文化学園大学大学院の安 常希(アン サンヒ)氏と、「接触順序を考慮したクロスメディア情報処理モデルの検証―マス広告からウェブサイトへの誘導―」を書かれた駒澤大学の中野 香織氏、千葉商科大学の松本 大吾氏に決定いたしました。

若手研究者、実務者の育成を目的とし、今後のダイレクトマーケティングに関する研究の一層の発展が期待される研究者、実務者に授与される「田島記念賞」につきましては、審査委員の先生方と厳正に審議させていただきました結果、「サービス・リカバリーによる顧客ロイヤルティの変化~消費者意思決定プロセスと顧客満足メカニズムに基づくサービス・リカバリーの役割に関する考察を中心にして~」を書かれた早稲田大学大学院の濱田 千代(ハマダ チヨ)氏に決定いたしました。

<特別賞>
早稲田大学名誉教授 亀井 昭宏(カメイ アキヒロ)氏

<受賞理由>
亀井氏は、当学会のマーケティングコミュニケーション論を中心とした学術基盤を形成し、さらに設立当初より学会の学術的研究、特に大学院での人材育成を提唱し、早稲田大学大学院商学研究科における、ダイレクトマーケティングカリキュラムの充実によって、実務者、若手の研究者を育成した。

<奨励賞>
駒澤大学 中野 香織(ナカノ カオリ)氏
千葉商科大学 松本 大吾(マツモト ダイゴ)氏

<受賞理由>
この論文は、メディアの順序の効果を実証的に考察した先駆的な論文で、特に最初に接触したメディアの広告態度が次に接触するメディアの広告にどう影響するかという点と、Webサイトを使用することによってどのように変化するかという影響を示唆した。学術論文として申し分ない。ただ、ソーシャルネットワークのように新しいメディアにより、より消費者自身の積極的な情報発信を汲むと同時に、実践への具体的な戦略提案が欲しかった。今後の研究に期待したい。

<奨励賞>
文化学園大学大学院 安 常希(アン サンヒ)氏

<受賞理由>
これまであまり研究されてこなかった知覚リスクについて、衣料商品のeショッピングの中で構造を解明した、極めて挑戦的な論文であり、その上で日韓のeショッピングにおける構造の違いを説明した。ただ、方法論の導出の点で、精密さに欠ける部分があり、日韓のショッピング構造の文化的背景についてはもっと掘り下げる必要がある。今後のグローバルなマーケティング展開にあたって役割を果たす論文であることには間違いない。

<田島記念賞>
ジャパンテーブルキャスト(株) 濱田 千代(ハマダ チヨ)氏

<受賞理由>
サービスリカバリーとは、顧客が不満を抱いた場合に、どういう形でそれを回復していくかという戦略であり、ダイレクトマーケティングにとっては核心的なテーマである。この論文は、丁寧なレビューで理論的で適切な枠組みを構成している。十分に今後の使用に耐えられるものだが、結論部分にもう少し実践的であったりオリジナリティを明確に出して欲しかった。これから、実務経験や学術的な研究を重ね、一層良い研究成果が期待される。

2012年7月
学会賞審査委員一同

過去の受賞者