「フリーランス保護法」の概要と対応ポイントの整理

<発表者>
日本ダイレクトマーケティング学会法務部会長 高橋善樹弁護士

・概要
2023年4月に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス保護法)が成立し、5月から公布されました。政令やガイドラインはまだできていないものの、「フリーランス保護法」の概要や対応ポイントについて、一足早く高橋部会長による解説が行われました。

近年、個人がフリーランスを含む多様な働き方の中から、自分に応じた働き方を選択できる環境整備が重要となっています。その一方で、発注者による報酬の支払遅延や仕事内容の変更などのトラブルも多く発生。こうした状況を改善し、個人が事業者として受託業務に安定的に従事することができる環境を整備するために「フリーランス保護法」が制定されました。

 部会ではこの法律を、第一章の総則に始まり、フリーランスを「事業者」の側面で捉えて取引の適正化を目指し、公正取引員会、中小企業庁長官による下請法に準じた規制を行う第二章、フリーランスを「特定受託業務従事者」として「労働者」の側面からとらえ、就業環境の整備に関する規制を行う第三章に分けて説明が行われました。

フリーランス保護法では個人法人を問わず、働き手が一人で従業員がいない点に着目して定義しており、建設業の一人親方や個人受託の自動車運送業者等なども含まれると説明。業務を委託する側の特定業務委託事業者には、これらフリーランスに対し、報酬額や支払期日、その他の事項を書面又は電磁的方法により明示するなど、下請法に準じた規定が設けられているとしました。さらに、労働環境整備として妊娠、出産、介護といった個人の状況に応じた必要な配慮義務を負うことや、違反した場合は行政処分や罰金が科されることも強調しました。

また同法律の課題として、単発の業務委託は対象外となることや、実態は会社から指揮命令を受けて働いている労働者であるにもかかわらず、業務委託契約が締結されている「偽装フリーランス」になることなどへの指摘がありました。

以上