(前半)インボイス制度を契機とした取引条件の見直しや解約にかかる、独占禁止法または下請法上の考え方について
(後半)改正公益通報者保護法について

<発表者>
日本ダイレクトマーケティング学会法務部会長 高橋善樹弁護士

・概要

今年1月19日に「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」が公表されたことを受け、その中からEC・通販事業者の仕入れ業務に関して特に重要と思われるポイントを取り上げて解説が行われました。

インボイス制度の実施を契機に仕入先である免税事業者との取引条件見直しを検討する場合、独占禁止法または下請法上どのような行為が問題となるか(価格改定、取引停止等)について「Q&A」で触れていることに言及。免税事業者等である小規模事業者は売上先の事業者と比べて情報量や交渉力の面で格差があるため、売上先の意向で取引条件を見直す場合は、その方法や内容によっては独占禁止法や下請法が問題となる可能性があると指摘しました。

また、免税事業者が課税事業者登録した場合と登録しなかった場合についても触れ、売上先が価格交渉をする場合の注意事項を説明。免税事業者に対し、課税事業者になるよう要請すること自体に問題はないものの、課税事業者にならなければ取引価格を引き下げるとか、応じなければ取引を打ち切るなどと一方的に通告することは、独占禁止法や下請法上、問題となるおそれがあると述べました。

この「Q&A」が3月に改訂され、簡易課税制度の説明を充実させるとともに解約について追記があったことに言及。この部分は「消費税転嫁対策特別措置法の失効後における消費税の転嫁拒否等の行為に係る独占禁止法及び下請法の考え方に関するQ&A」も関連すると注意を促しました。

さらに、6月に施行される「改正公益通報者保護法」についても触れました。改正前は「内部公益通報した者に通知するように努める」にとどまっていた事業者義務を、改正後は「公益通報対応業務従事者の指定義務」及び「公益通報対応体制整備義務」として定めたとしました。この「公益通報対応体制整備義務」を負うのは常時使用する労働者の数が301人以上の事業者であることや、情報を早期かつ円滑に把握するには、内部公益通報を“部門横断的”に受け付ける窓口を設けることが極めて重要であると説明しました。