「ノコギリヤシサプリ差止請求裁判の行方は?」

<発表者>
広告リスク研究所 矢野誠二氏

・概要
頻尿改善効果を訴求する健康食品の広告に対する消費者団体の差止請求訴訟で、岡山地裁は原告の消費者団体敗訴の判決を下しました。判決文には、広告は「男性の頻尿症状改善を訴求するもの」と認めた上で、“疾病名を挙げたり、改善の程度を具体的に示したりしなければ違反にならない”とか、「個人の感想です」「効果には個人差があります」といった打消し表示の効果を認める内容が記載されていることが話題になりました。

しかし、これらは、“商品を医薬品と誤認するか?”とか、効果を肯定する論文が存在すると判断した上で、“その効果が過度に確実なものと誤認するか?”といった争点に対して示された見解であり、健康食品の広告全般について、「疾病名を挙げなければOK」「個人の感想と書けばOK」としたものではないことに注意しなければなりません。

ちなみに、被告提出の効果を肯定する論文は、病態者を被検者としていること、盲検性が確保されていないこと、試料の同等性が確保されていないことなど、食品の機能性を裏付けるための試験に必要な要件として、機能性表示食品の届出ガイドラインにも記載されている事項が満たされておらず、これらの論文を食品の機能性の根拠として採用した岡山地裁の判断は適切ではなかったと考えます。仮に、本件の広告に対して、消費者庁が景表法第七条第2項を適用して根拠の合理性を問うような状況では、「合理的な根拠がある」と認められることは難しいと思われます。

以上