「優先的地位の濫用に関する緊急調査の結果」について

<発表者>
日本ダイレクトマーケティング学会法務部会長 高橋善樹弁護士

・概要
優越的地位の濫用に関する緊急調査において、令和4年12月に13社の事業者名が公表され、4030社に対して注意喚起文書が送付されたことを受け、重要と思われるポイントについて解説が行われました。

まず、今回の優越的地位の濫用の緊急調査については、実態調査としながら事業者名の公表、注意喚起文書の送付が行われており、単なる実態調査の範囲を超えていると説明。今後も引き続き今回の緊急調査を分析し、コンプライアンスの在り方を検討しておくことが重要としました。

詳細として、令和4年2月に独占禁止法のQ&Aが改定され、「労務費、原材料費、エネルギーコスト等のコスト上昇分を取引価格に反映せず、従来どおりに取引価格を据え置くことは、独占禁止法上の優越的地位の濫用の要件の1つに該当するおそれがある」とされたことについて説明がありました。

特に、「受注者から取引価格の引き上げを要請されていない場合において、労務費、原材料費、エネルギーコスト等の上昇を理由とした取引価格の引き上げを貴社が自主的に取引価格を引き上げたことはありましたか」の質問に対し、「自主的に引き上げたことはない」と発注者が回答した場合について言及。そのあとの「貴社が取引価格を引き上げなかった商品・サービスについて、貴社と受注者との間で、価格交渉の場は設けましたか」の質問に対して「設けていない」と回答すると注意喚起文書が送付されたことについて、注意すべき重要ポイントであると述べました。

注意喚起文書の送付について、違反する前の段階で当局から指摘を受けるリスクは拡大していると指摘。今後は違反手前の段階でもこういった運用が行われる傾向があることを考慮し、発注側はコンプライアンスの基準厳格化を検討せざるを得ないとしました。

以上