「初回割引定期購入契約」の広告表現に係る判例と、申込み最終画面規制

<発表者>
発表者:発表者:広告リスク研究所 矢野誠二氏

・概要

1.景表法第30条第1項第2号に基づく不当表示差止め請求に係る裁判の経緯

《平成30年1月19日》
原告 特定非営利活動法人消費者被害防止ネットワーク東海
被告 株式会社 メディアハーツ(現 ファビウス)
《令和元年12月26日》
判決 原告の請求をいずれも棄却
《令和2年1月8日》
原告控訴(名古屋高裁)
《令和3年9月29日》
判決 原告敗訴(報道による)

2.論点

①「初回価格」の9分の1のフォントで表示された「最低4回継続」という条件が確実に認識できるか?
②1回目で中途解約できると誤認する可能性があるか?
③申し込み確認画面に総額表示が表示されていないことは、1回のみ安価で購入できるという誤認につながるか?
④国センに寄せられた相談件数は、誤認が生じていることの根拠となるか?
⑤初回支払額を必須契約回数4回分の平均支払額よりも安く表示することは、実際の価格よりも安いとの誤認につながるか?

3.判決に係る所感

◎ ファビウスの広告には特商法に基づく表示事項がすべて記載されており、文字の大きさや表示方法も分かりやすい。判決は至極妥当。(そもそも、原告が何故この広告を問題にしたのかが理解できない)
◎ 判決の中では、申し込みの最終画面の表示に限らず、パソコン画面の遷移を含む、申込内容確認画面に至る段階で表示された内容も契約内容の理解のために有効な表示と判断している。このことは、現在進められている申し込み最終画面のガイドラインのバブコメ等でも主張する必要がある
◎ 商品発送数に対する国センへの相談件数の比率をもって、「誤認を生じさせる表示ではない」とした判断には疑問が残る。初回解約を申し出て、改めて表示内容を説明され、しぶしぶ納得した消費者はかなりの数に上るのではないか?
◎ 「5回目以降も継続して購入することができるのであるから、原告主張に係る平均支払金額という金額自体を想定することができない」という裁判所の判断には違和感がある。(原告は、最低契約回数4回の平均支払額と初回支払額の比較を問題にしている)