FEATURED NEWS
2023年4月20日 開催レポート(法務研究部会)
「個人情報の漏えいに対する備え」 <発表者> 日本ダイレクトマーケティング学会法務部会長 高橋善樹弁護士 太樹法律事務所 土肥衆弁護士 ・概要 不可避的に生じるおそれがある情報漏えい問題に対して、どのように備えておくべきかについて解説が行われました。 個人情報の漏えいには、内部からの漏えいと外部からの不正アクセスの問題があること、またこれらの漏えいがあった場合には、個人情報保護委員会への速報、確報、本人への通知等個人情報保護委員会のガイドラインに定められている必要な対応についての説明がありました。 上記対応のほか、外部からの不正アクセスの場合においては、原因と漏えいの有無の調査、問い合わせ窓口の設置、運営やクレジット情報等の漏えいを伴う場合には、カード決済を復旧させるために必要な対応等に係る費用等を含め、サイバー保険の利用とその効果の検証、個人情報の管理、ネット決済等の委託に伴う契約条項等の検討等、多くの課題があります。 また、内部からの漏えいの場合においては、従業員の連絡先等の情報が入ったスマホ、ノートパソコンの紛失、盗難等が考えられますが、これらによってもガイドラインに定められている必要な対応が求められる場合があります。 リスク管理として、個人情報のセキュリティ対応を行うことはもちろん、不可避的に生じるおそれがある情報漏えい問題に対して、どのように備えておくべきか、あらかじめ検討をしておくことが推奨されるといえます。 以上
2023年3月16日 開催レポート(法務研究部会)
「優先的地位の濫用に関する緊急調査の結果」について <発表者> 日本ダイレクトマーケティング学会法務部会長 高橋善樹弁護士 ・概要 優越的地位の濫用に関する緊急調査において、令和4年12月に13社の事業者名が公表され、4030社に対して注意喚起文書が送付されたことを受け、重要と思われるポイントについて解説が行われました。 まず、今回の優越的地位の濫用の緊急調査については、実態調査としながら事業者名の公表、注意喚起文書の送付が行われており、単なる実態調査の範囲を超えていると説明。今後も引き続き今回の緊急調査を分析し、コンプライアンスの在り方を検討しておくことが重要としました。 詳細として、令和4年2月に独占禁止法のQ&Aが改定され、「労務費、原材料費、エネルギーコスト等のコスト上昇分を取引価格に反映せず、従来どおりに取引価格を据え置くことは、独占禁止法上の優越的地位の濫用の要件の1つに該当するおそれがある」とされたことについて説明がありました。 特に、「受注者から取引価格の引き上げを要請されていない場合において、労務費、原材料費、エネルギーコスト等の上昇を理由とした取引価格の引き上げを貴社が自主的に取引価格を引き上げたことはありましたか」の質問に対し、「自主的に引き上げたことはない」と発注者が回答した場合について言及。そのあとの「貴社が取引価格を引き上げなかった商品・サービスについて、貴社と受注者との間で、価格交渉の場は設けましたか」の質問に対して「設けていない」と回答すると注意喚起文書が送付されたことについて、注意すべき重要ポイントであると述べました。 注意喚起文書の送付について、違反する前の段階で当局から指摘を受けるリスクは拡大していると指摘。今後は違反手前の段階でもこういった運用が行われる傾向があることを考慮し、発注側はコンプライアンスの基準厳格化を検討せざるを得ないとしました。 以上
2023年2月16日 開催レポート(法務研究部会)
「美・健商品広告関連トピックス」—健食広告、及び、遠赤衣料について— <発表者> 広告リスク研究所 矢野誠二氏 ・概要 1.「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の特に留意すべき改訂内容 ①“明らか食品”の機能性に関する広告に言及した内容が複数追記されており、今後取締りが強化される可能性がある ②広告に“疲れが取れない”“メタボが気になる”等、現状での不安・悩みを表示した場合、及び、“年齢とともに、低下する○○成分”といった、特性の成分・物質の減少に関連付けた表示は、身体機能等に係る不安や悩みが解消されるといった健康保持増進効果等を暗示的又は間接的に表現するものという見解が示されている 2.医療機器の一般的名称「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の制定について ①従来の「温熱用パック」の内、新たな定義に該当するもので、かつ、日本医療機器工業会の自主基準を満たすものは、新たに、遠赤外線血行促進衣として届を出す ②上記以外の既存「温熱用パック」は、12月13日までに廃止届の措置をする ③着用した使用者自身の体温により(衣類等からの遠赤外線の輻射によるものを含む。)血行を促進する商品は、“血行促進”の訴求のみであれば、医療機器に該当しない 以上
2023年1月19日 開催レポート(法務研究部会)
「ノコギリヤシサプリ差止請求裁判の行方は?」 <発表者> 広告リスク研究所 矢野誠二氏 ・概要 頻尿改善効果を訴求する健康食品の広告に対する消費者団体の差止請求訴訟で、岡山地裁は原告の消費者団体敗訴の判決を下しました。判決文には、広告は「男性の頻尿症状改善を訴求するもの」と認めた上で、“疾病名を挙げたり、改善の程度を具体的に示したりしなければ違反にならない”とか、「個人の感想です」「効果には個人差があります」といった打消し表示の効果を認める内容が記載されていることが話題になりました。 しかし、これらは、“商品を医薬品と誤認するか?”とか、効果を肯定する論文が存在すると判断した上で、“その効果が過度に確実なものと誤認するか?”といった争点に対して示された見解であり、健康食品の広告全般について、「疾病名を挙げなければOK」「個人の感想と書けばOK」としたものではないことに注意しなければなりません。 ちなみに、被告提出の効果を肯定する論文は、病態者を被検者としていること、盲検性が確保されていないこと、試料の同等性が確保されていないことなど、食品の機能性を裏付けるための試験に必要な要件として、機能性表示食品の届出ガイドラインにも記載されている事項が満たされておらず、これらの論文を食品の機能性の根拠として採用した岡山地裁の判断は適切ではなかったと考えます。仮に、本件の広告に対して、消費者庁が景表法第七条第2項を適用して根拠の合理性を問うような状況では、「合理的な根拠がある」と認められることは難しいと思われます。 以上
2022年10月26日 開催レポート(法務研究部会)
「期間限定割引広告」の不当性について <発表者> 広告リスク研究所 矢野誠二氏 ・概要 期間限定割引販売をみだりに延長、繰り返した場合に、有利誤認表示として措置命令が発出される事例が近年散見されるようになった。 しかし、セール期間の延長やセールの繰り返しは、通常広く行われている商習慣であり、これらと措置命令案件を区分する指標は示されていない。 そこで、本発表では、処分の根拠となる違法性が、セール期間を延長したり、短期間で繰返したりする過程で、不当な二重価格表示の状態に陥ることによって生じることに着目し、その視点から、不当表示となる期間延長や繰返しの要件について検討した。 二重価格表示には、“過去の販売価格を比較対照価格とした二重価格表示”と“将来の価格を比較対照価格とする二重価格表示”の二つの要素が含まれる。 過去の販売価格を比較対照価格として期間限定値引きをする場合、セール再開時に「通常価格」が適正な比較対照価格としての要件を満たしていなければならない。なお、限定販売の期間が明示されていれば、期間中に要件を満たさなくなることは差し支えない。 セールを繰り返す場合も、セール再開時に表示する「通常価格」が適正な比較対照価格としての要件を満たすように休止期間(通常価格での販売期間)を設定する必要がある。 ちなみに、限定期間終了後、常に、直前の限定期間を上回る日数だけ「通常価格」による販売期間を設ければ、不当な二重価格表示となることはない。 〝新発売記念セール“などセール期間以前に販売実績がない場合だけでなく、“今だけ○○割引”といった、セール終了後には対照価格で販売する旨を強調した場合、通常の期間限定価格には将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示と捉えられる可能性もある。 延長・繰り返しの可能性がある場合は、セール期間中だけ有利な価格で購入できる旨の表現を避けるとともに、割引期間の表示以外に“今だけ安い”旨強調する広告表現を行っていない場合以外は、セール終了後2週間以上比較対照価格で販売期間を設けることが望ましい。 以上
2022年9月28日 開催レポート(法務研究部会)
景品表示法違反で調査・命令を受けた事業者の不服申立て手段 <発表者> 太樹法律事務所 弁護士 土肥衆 ・概要 今年1月、東京地裁は、衛生管理製品2商品について、景品表示法に基づく措置命令に対する事業者の仮の差止めを認める決定を下しました。結局、東京高裁は、東京地裁の判断を覆し、消費者庁は、上記2商品について措置命令を発出しましたが、この機会に、事業者が、景品表示法違反で調査を受けた場合に取り得る法的手続について、各手続のメリットとデメリットを整理し、検討しました。 なお、今回の整理、検討は、事業者が消費者庁から調査を受け、措置命令、課徴金納付命令手続に至る過程において、法的根拠のある手段により措置命令、課徴金納付命令を争う場合を想定しています。 事業者が取り得る法的手続には、措置命令前後に分けた場合、仮の差止め・差止訴訟が措置命令前に、審査請求及び執行停止・取消訴訟が措置命令後にあることを説明し、各手続の流れ、概要を説明しました。 上記3つの法的手段のうち、仮の差止め・差止訴訟については、損害発生の要件(「償うことのできない損害」)が極めて厳しいこと等に触れました。 措置命令後の手続として、審査請求と執行停止・取消訴訟の2つがあるところ、両者には判断主体の違いがあることを説明しました。そして、審査請求では処分庁と審査庁がともに消費者庁であるため、裁判所が判断する執行停止・取消訴訟と比べて、中立性に欠けるのではないかとの指摘があること等に触れました。その上で、審査請求では、行政不服審査会への諮問、同審査会の答申等を踏まえ、処分庁が処分を取り消す裁決を下した事例もあることを取り上げました。 最後に、各手続にはメリット、デメリットがあり、最終的には、事業者が、自らが供給する商品又はサービス、自らの財務状況等を考慮して、措置命令の前と後のいずれで争うのか(仮の差止め・差止訴訟を提起するのか)、措置命令後は審査請求、執行停止・取消訴訟のいずれを申し立てるかを判断することが望ましいと私見を述べました。 以上
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