FEATURED NEWS
2022年10月26日 開催レポート(法務研究部会)
「期間限定割引広告」の不当性について <発表者> 広告リスク研究所 矢野誠二氏 ・概要 期間限定割引販売をみだりに延長、繰り返した場合に、有利誤認表示として措置命令が発出される事例が近年散見されるようになった。 しかし、セール期間の延長やセールの繰り返しは、通常広く行われている商習慣であり、これらと措置命令案件を区分する指標は示されていない。 そこで、本発表では、処分の根拠となる違法性が、セール期間を延長したり、短期間で繰返したりする過程で、不当な二重価格表示の状態に陥ることによって生じることに着目し、その視点から、不当表示となる期間延長や繰返しの要件について検討した。 二重価格表示には、“過去の販売価格を比較対照価格とした二重価格表示”と“将来の価格を比較対照価格とする二重価格表示”の二つの要素が含まれる。 過去の販売価格を比較対照価格として期間限定値引きをする場合、セール再開時に「通常価格」が適正な比較対照価格としての要件を満たしていなければならない。なお、限定販売の期間が明示されていれば、期間中に要件を満たさなくなることは差し支えない。 セールを繰り返す場合も、セール再開時に表示する「通常価格」が適正な比較対照価格としての要件を満たすように休止期間(通常価格での販売期間)を設定する必要がある。 ちなみに、限定期間終了後、常に、直前の限定期間を上回る日数だけ「通常価格」による販売期間を設ければ、不当な二重価格表示となることはない。 〝新発売記念セール“などセール期間以前に販売実績がない場合だけでなく、“今だけ○○割引”といった、セール終了後には対照価格で販売する旨を強調した場合、通常の期間限定価格には将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示と捉えられる可能性もある。 延長・繰り返しの可能性がある場合は、セール期間中だけ有利な価格で購入できる旨の表現を避けるとともに、割引期間の表示以外に“今だけ安い”旨強調する広告表現を行っていない場合以外は、セール終了後2週間以上比較対照価格で販売期間を設けることが望ましい。 以上
2022年9月28日 開催レポート(法務研究部会)
景品表示法違反で調査・命令を受けた事業者の不服申立て手段 <発表者> 太樹法律事務所 弁護士 土肥衆 ・概要 今年1月、東京地裁は、衛生管理製品2商品について、景品表示法に基づく措置命令に対する事業者の仮の差止めを認める決定を下しました。結局、東京高裁は、東京地裁の判断を覆し、消費者庁は、上記2商品について措置命令を発出しましたが、この機会に、事業者が、景品表示法違反で調査を受けた場合に取り得る法的手続について、各手続のメリットとデメリットを整理し、検討しました。 なお、今回の整理、検討は、事業者が消費者庁から調査を受け、措置命令、課徴金納付命令手続に至る過程において、法的根拠のある手段により措置命令、課徴金納付命令を争う場合を想定しています。 事業者が取り得る法的手続には、措置命令前後に分けた場合、仮の差止め・差止訴訟が措置命令前に、審査請求及び執行停止・取消訴訟が措置命令後にあることを説明し、各手続の流れ、概要を説明しました。 上記3つの法的手段のうち、仮の差止め・差止訴訟については、損害発生の要件(「償うことのできない損害」)が極めて厳しいこと等に触れました。 措置命令後の手続として、審査請求と執行停止・取消訴訟の2つがあるところ、両者には判断主体の違いがあることを説明しました。そして、審査請求では処分庁と審査庁がともに消費者庁であるため、裁判所が判断する執行停止・取消訴訟と比べて、中立性に欠けるのではないかとの指摘があること等に触れました。その上で、審査請求では、行政不服審査会への諮問、同審査会の答申等を踏まえ、処分庁が処分を取り消す裁決を下した事例もあることを取り上げました。 最後に、各手続にはメリット、デメリットがあり、最終的には、事業者が、自らが供給する商品又はサービス、自らの財務状況等を考慮して、措置命令の前と後のいずれで争うのか(仮の差止め・差止訴訟を提起するのか)、措置命令後は審査請求、執行停止・取消訴訟のいずれを申し立てるかを判断することが望ましいと私見を述べました。 以上
2022年7月14日 開催レポート(法務研究部会)
食品広告関連法規制のトピックス <発表者> 広告リスク研究所 矢野 誠二氏 ・概要 糖類・ナトリウム塩不使用・無添加表示の基準は、食品表示基準第七条に定められています。一方、今年3月に出された、「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」で示された、食品添加物の不使用・無添加に関する規制は、表示禁止事項を定めた食品表示基準第九条に基づくものです。不当な食品添加物の不使用表示が、同条に基づく優良・有利誤認表示として規定されたことは、商品本体表示に止まらず、広告にも多大な影響を与えることが懸念されます。 同ガイドラインでは、何が添加されているかが曖昧な単なる「無添加」の表示や食品表示基準に規定されていない用語(人工、合成、 化学、天然)を使用した表示が禁止されているほか、特定の添加物について不使用・無添加表示を行う場合は、元々その添加物が添加されない場合や同様の働きをする原材料・添加物が添加されている場合は表示不可としています。 特定の添加物が不使用・無添加である旨の表示についての規制内容は、別表記載事項を含めた「食品表示基準」や「食品、添加物の規格基準」に精通していなければ理解が難しく、一般的な販売業者が不使用・無添加表示の可否を判断することがかなり困難な課題となることが予想されます。 令和五年4月から遺伝子組換え表示制度が完全施行される、遺伝子組換え表示対象農産物を含む場合の表示は従来通りですが、これまで、大豆・とうもろこしについて5%まで遺伝子組換え農産物の混入が認められていた“非遺伝子組換え表示”は、意図せざる混入がないことを確認できている場合の“遺伝子組換えでない”旨の表示と、5%以下の混入の可能性が否定できない“分別生産流通管理済み”“遺伝子組換え混入防止管理済み”等の表示に区分されることになります。 6月に発表された「インターネット販売における食品表示の情報提供に関するガイドブック」は、その内容に従った表示を義務付けるものではありませんが、大手事業者がガイドブックの内容に従った表示を取り入れると、それがデファクトスタンダード化することも想定されます。 直ちにガイドブックに従った表示に変更することが難しい場合も、必要になったときにすぐに対応できるよう、自社の現状とガイドブックの内容を照らし合わせて、課題の整理は進めておくことが望ましいと考えます。
2022年6月16日 開催レポート(法務研究部会)
「取引デジタルプラットフォーム消費者保護法」と「デジタルプラットフォーム取引透明化法」が与えるEC事業者への影響 <発表者> 一般社団法人ECネットワーク理事 沢田登志子氏 ・概要 今年5月に施行された消費者庁の「取引デジタルプラットフォーム消費者保護法」と昨年2月に施行された経済産業省の「デジタルプラットフォーム取引透明化法」について、通販・EC事業者への影響という観点から、両法律の概要と運用状況、今後の課題とされていることなどを解説していただきました。 まず、「取引デジタルプラットフォーム消費者保護法」に関しては、B2Cオンラインモールを対象とする法律であり通販・ECへの直接の規制ではないものの、出店者にも影響が生じる可能性があると説明。出店審査や苦情対応等に関してモールに努力義務が課されていることから、モールによる審査(商品・表⽰・広告・顧客対応等)の強化や、違反へのペナルティ強化なども想定できるとの指摘がありました。 また、ECネットワークが事務局を務める「オンラインマーケットプレイス協議会」会員の楽天グループが公表する指針についての取り組みを例に挙げ、違反点数制度や禁⽌商材モニタリングなど導入している内容を紹介。同法律ではデジタルプラットフォーマーの規模は問われていないため、大手に限らず、どのモールにおいても出店している通販・EC事業者に関わってくる可能性があるので注意が必要としています。 一方の「デジタルプラットフォーム取引透明化法」は、一定規模以上のオンラインモールやアプリマーケットに対し、公正性や透明性向上の取り組みを求めるものであると解説。ECモールではアマゾン、楽天、ヤフー、アプリストアではAppleとGoogleが対象との説明がありました。 この法律は出店事業者の権利や利益の確保につながることが期待されていて、出店者に対するモールの姿勢の透明化、苦情申出ルートの整備、モールによる理不尽な⾏為の是正などが見込める可能性があるとのことです。無料相談窓口として、オンラインモール利用事業者向には公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)、アプリストア利用事業者には一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラムを設置。事案によっては、公正取引委員会の独占禁止法と連動する可能性も示唆されていると言及しました。
2022年4月20日 開催レポート(法務研究部会)
(前半)インボイス制度を契機とした取引条件の見直しや解約にかかる、独占禁止法または下請法上の考え方について (後半)改正公益通報者保護法について <発表者> 日本ダイレクトマーケティング学会法務部会長 高橋善樹弁護士 ・概要 今年1月19日に「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」が公表されたことを受け、その中からEC・通販事業者の仕入れ業務に関して特に重要と思われるポイントを取り上げて解説が行われました。 インボイス制度の実施を契機に仕入先である免税事業者との取引条件見直しを検討する場合、独占禁止法または下請法上どのような行為が問題となるか(価格改定、取引停止等)について「Q&A」で触れていることに言及。免税事業者等である小規模事業者は売上先の事業者と比べて情報量や交渉力の面で格差があるため、売上先の意向で取引条件を見直す場合は、その方法や内容によっては独占禁止法や下請法が問題となる可能性があると指摘しました。 また、免税事業者が課税事業者登録した場合と登録しなかった場合についても触れ、売上先が価格交渉をする場合の注意事項を説明。免税事業者に対し、課税事業者になるよう要請すること自体に問題はないものの、課税事業者にならなければ取引価格を引き下げるとか、応じなければ取引を打ち切るなどと一方的に通告することは、独占禁止法や下請法上、問題となるおそれがあると述べました。 この「Q&A」が3月に改訂され、簡易課税制度の説明を充実させるとともに解約について追記があったことに言及。この部分は「消費税転嫁対策特別措置法の失効後における消費税の転嫁拒否等の行為に係る独占禁止法及び下請法の考え方に関するQ&A」も関連すると注意を促しました。 さらに、6月に施行される「改正公益通報者保護法」についても触れました。改正前は「内部公益通報した者に通知するように努める」にとどまっていた事業者義務を、改正後は「公益通報対応業務従事者の指定義務」及び「公益通報対応体制整備義務」として定めたとしました。この「公益通報対応体制整備義務」を負うのは常時使用する労働者の数が301人以上の事業者であることや、情報を早期かつ円滑に把握するには、内部公益通報を“部門横断的”に受け付ける窓口を設けることが極めて重要であると説明しました。
2022年1月20日 開催レポート(法務研究部会)
インボイス制度施行後の取引先に対する対応の留意点について <発表者> 高橋 善樹弁護士(太樹法律事務所) 矢野 誠二氏(広告リスク研究所) ・概要 2033年(令和5年)10月から、インボイス(適格請求書)制度がスタートします。同制度はレシート・請求書に、新たに事業者の登録番号や税率(標準税率10%・軽減税率8%)ごとの税額などを記載し、より厳格に消費税計算(仕入税額控除等)を行うものです。2021年(令和3年)10月1日から課税事業者登録の申請受付が開始されており、2023年(令和5年)10月からインボイスを発行するためには、2023年3月31日までに課税事業者の登録申請を行うことが必要です。 ただ、事業者が仕入れ税額控除を行うためには、仕入先が課税事業者登録事業者であることが必要となります。そのため、新規取引や既存取引にあたり、事業者は仕入れ先に「課税事業者登録を求めることができるかどうか」が問題となります。また、既存仕入先は益税を失うため課税事業者登録しないことも考えられ、「課税事業者登録しないことを理由として契約を終了させることができるかどうか」が問題になっています。 仕入先が課税事業者登録者ではない場合は適格請求書の発行ができず、事業者は仕入税額控除ができないという不利益を被ることになります。しかし、課税事業者に登録申請を要請することは許されるものの、強制はできません。仕入先が下請事業者の場合や自社が取引上の優越的地位にある場合は要注意で、今後発行が予定されているガイドライン内容を注視していく必要があります。
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