FEATURED NEWS
2022年4月20日 開催レポート(法務研究部会)
(前半)インボイス制度を契機とした取引条件の見直しや解約にかかる、独占禁止法または下請法上の考え方について (後半)改正公益通報者保護法について <発表者> 日本ダイレクトマーケティング学会法務部会長 高橋善樹弁護士 ・概要 今年1月19日に「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」が公表されたことを受け、その中からEC・通販事業者の仕入れ業務に関して特に重要と思われるポイントを取り上げて解説が行われました。 インボイス制度の実施を契機に仕入先である免税事業者との取引条件見直しを検討する場合、独占禁止法または下請法上どのような行為が問題となるか(価格改定、取引停止等)について「Q&A」で触れていることに言及。免税事業者等である小規模事業者は売上先の事業者と比べて情報量や交渉力の面で格差があるため、売上先の意向で取引条件を見直す場合は、その方法や内容によっては独占禁止法や下請法が問題となる可能性があると指摘しました。 また、免税事業者が課税事業者登録した場合と登録しなかった場合についても触れ、売上先が価格交渉をする場合の注意事項を説明。免税事業者に対し、課税事業者になるよう要請すること自体に問題はないものの、課税事業者にならなければ取引価格を引き下げるとか、応じなければ取引を打ち切るなどと一方的に通告することは、独占禁止法や下請法上、問題となるおそれがあると述べました。 この「Q&A」が3月に改訂され、簡易課税制度の説明を充実させるとともに解約について追記があったことに言及。この部分は「消費税転嫁対策特別措置法の失効後における消費税の転嫁拒否等の行為に係る独占禁止法及び下請法の考え方に関するQ&A」も関連すると注意を促しました。 さらに、6月に施行される「改正公益通報者保護法」についても触れました。改正前は「内部公益通報した者に通知するように努める」にとどまっていた事業者義務を、改正後は「公益通報対応業務従事者の指定義務」及び「公益通報対応体制整備義務」として定めたとしました。この「公益通報対応体制整備義務」を負うのは常時使用する労働者の数が301人以上の事業者であることや、情報を早期かつ円滑に把握するには、内部公益通報を“部門横断的”に受け付ける窓口を設けることが極めて重要であると説明しました。
2022年1月20日 開催レポート(法務研究部会)
インボイス制度施行後の取引先に対する対応の留意点について <発表者> 高橋 善樹弁護士(太樹法律事務所) 矢野 誠二氏(広告リスク研究所) ・概要 2033年(令和5年)10月から、インボイス(適格請求書)制度がスタートします。同制度はレシート・請求書に、新たに事業者の登録番号や税率(標準税率10%・軽減税率8%)ごとの税額などを記載し、より厳格に消費税計算(仕入税額控除等)を行うものです。2021年(令和3年)10月1日から課税事業者登録の申請受付が開始されており、2023年(令和5年)10月からインボイスを発行するためには、2023年3月31日までに課税事業者の登録申請を行うことが必要です。 ただ、事業者が仕入れ税額控除を行うためには、仕入先が課税事業者登録事業者であることが必要となります。そのため、新規取引や既存取引にあたり、事業者は仕入れ先に「課税事業者登録を求めることができるかどうか」が問題となります。また、既存仕入先は益税を失うため課税事業者登録しないことも考えられ、「課税事業者登録しないことを理由として契約を終了させることができるかどうか」が問題になっています。 仕入先が課税事業者登録者ではない場合は適格請求書の発行ができず、事業者は仕入税額控除ができないという不利益を被ることになります。しかし、課税事業者に登録申請を要請することは許されるものの、強制はできません。仕入先が下請事業者の場合や自社が取引上の優越的地位にある場合は要注意で、今後発行が予定されているガイドライン内容を注視していく必要があります。
2021年12月20日 開催レポート(法務研究部会)
「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン(案)」について <発表者> 高橋 善樹弁護士(太樹法律事務所) 矢野 誠二氏(広告リスク研究所) ・概要 首記ガイドラインのパブコメに対する意見書提出を目指して、ガイドラインの概要及び意見書素案に関する説明を行って、部会参加者で討議した。 (なお、意見書素案は、定例部会開催に先立って部会員が確認できる措置を取った) 意見書素案について部会出席者から以下の指摘があり、幹事会で検討したうえで修正を加え、添付資料の内容で12月23日に消費者庁あて提出した。 (1) 初回限定割引の定期購入契約自体は違法ではない旨高裁判決でも判断が示されているが、素案では法務部会が初回限定割引自体を“詐欺的”と捉えているかのような表現が認められる。・・・(修正)検討委員会で用いられた表現の引用であることが明確な箇所以外、詐欺的定期購入の用語を削除した。 (2) 初回限定割引なしの無期限定期購入は一般的な契約形態であり、トラブルも報告されていない。全ての無期限定期購入について、申込最終画面に総額表示をする必要はない。・・・(修正)申込最終画面の総額表示は、“初回を含む特定の回数について高い割引率を強調表示する広告に限って”必須とするように修正した。 (3) 解約に係る表示に関して、発信主義的な記載があることは問題である。・・・(修正)発信主義的な表記を削除した。 (4) 経過措置期間を長くとるよう要望してほしい。・・・(修正)2年の経過措置期間を設けて欲しい旨追記した。 ※意見書最終案の内容について、「“初回を含む特定の回数について高い割引率を強調表示する広告に限って”必須とするのであれば、かかる初回限定割引そのものをあたかも“詐欺的”と捉えているかのように読み取れる。これは、単に初回限定割引を行う定期購入であれば“詐欺的”ではないとする法務部会の見解に反し、いささか矛盾を生じているように感じられる」との意見が寄せられたが、初回限定割引は、検討委員会で契約内容の誤認されやすさが指摘され、法改正のきっかけともなった取引形態であり、初回の割引率しか認識していない消費者に高額な支払いにつながる契約であることを認識させる必要があると考えて、最終案の内容で提出した。 [...]
2021年11月18日 開催レポート(法務研究部会)
「初回割引定期購入契約」の広告表現に係る判例と、申込み最終画面規制 <発表者> 発表者:発表者:広告リスク研究所 矢野誠二氏 ・概要 1.景表法第30条第1項第2号に基づく不当表示差止め請求に係る裁判の経緯 《平成30年1月19日》 原告 特定非営利活動法人消費者被害防止ネットワーク東海 被告 株式会社 メディアハーツ(現 ファビウス) 《令和元年12月26日》 判決 原告の請求をいずれも棄却 《令和2年1月8日》 原告控訴(名古屋高裁) 《令和3年9月29日》 判決 原告敗訴(報道による) 2.論点 ①「初回価格」の9分の1のフォントで表示された「最低4回継続」という条件が確実に認識できるか? ②1回目で中途解約できると誤認する可能性があるか? ③申し込み確認画面に総額表示が表示されていないことは、1回のみ安価で購入できるという誤認につながるか? [...]
2021年10月21日 開催レポート(法務研究部会)
通信販売のトラブルと事業者の対応 ~なりすまし、未成年者、認知症等判断能力に問題がある可能性のある者との取引 ~ <発表者> 発表者 箕輪法律事務所 弁護士 土肥 衆 ・概要 通信販売においては、インターネット、電話やはがき等を利用した非対面の方法により取引が行われるため、対面による取引とは異なる問題が生じる可能性があります。 今回の法務研究部会では、「なりすまし」、「未成年者」、及び「認知症を患っていること等を理由に判断能力に課題を抱える者」との取引において、想定されるトラブル事例を用いて、事業者の対応を検討することとなりました。 とりわけ通信販売においては、事業者からは、注文の段階で、注文者の属性等は不明であることが通常であり、商品の発送後や役務提供後になって、本人や関係者からクレームを受けたり、場合によっては本人やその代理人等から取引の有効性を争われたりすることとなるため、事業者としては、注文を受ける段階で、可能な限り、トラブルを防止するためのシステムを構築するか、社内でのルールを定めておく等する必要があります。 事業者としては、抽象的には、「取引の性質上、注文が取消しや無効の対象となることが相当程度予想される場合や、取引の対象や金額等から取消しや無効によるリスクが高いと考えられる場合等においては、そのリスク及び事後的な紛争を回避することをシステムの構築に要するコスト等も考慮のうえ検討する必要がある」などと指摘しました。 「なりすまし」及び「未成年者」との取引上の問題点については、経済産業省が公表している「電子商取引及び情報材取引等に関する準則(令和元年12月)」に詳細な記載があるため、その該当箇所を参照していただければと思います。 「認知症等を理由に判断能力に課題を抱える者」との取引上の留意点については、制限行為能力者制度、同制度上の取消し、意思無能力無効や取消し及び無効の範囲等の民法上の議論に触れたほか、成年後見人は個人情報保護法上も本人の代理人と考えられていること等に触れて、個人情報保護法上生じる可能性のある問題についても若干の指摘をしました。 もっとも、本人と関係者間で注文に関する意見に相違がある場合等、通信販売におけるトラブルは、実務上、法律論だけでは対応できないことも多いと思われますので、事業者としては、原則論を踏まえた上で、トラブルや紛争を事前に回避するルールを定めたり、システムを構築すること等が必要となります。
2021年9月16日 開催レポート(法務研究部会)
2020年改正新個人情報保護法への対応ポイント <発表者> 鈴木靖氏(株式会社 シーピーデザインコンサルティング 代表取締役社長) ・概要 来年4月1日から全面施行される「改正個人情報保護法」に関し、8月4日に新個人情報保護法委員会のガイドラインが確定し公示されました。今回の発表ではこのガイドラインの内容も盛り込みながら、EC・通販事業者が知っておくべき新ルールについて話していただきました。 発表では、新たに改正・導入された内容ごとに、改正個人情報保護法が実務に影響を及ぼす具体的なケースを取り上げ、その対策や注意すべき点について解説。例えば「不適正な利用の禁止」や「漏えい等の報告の義務化」、「オプトアウトでの第三者提供」など、より規制が厳格化された事項について注意すべきケースを具体的に示しました。 また、越境移転の際の「外国にある第三者への提供」については、提供以外に“クラウドサービス等を利用していて契約先が日本法人でない場合”など、「共同利用」や「委託」が含まれることに注意を促しました。 第三者提供記録の開示についても、本人が開示請求できるようになることに言及したのをはじめ、Cookieや広告IDを他の事業者に提供している場合は注意が必要としました。そのほか、「保有個人データの枠の拡大」や「保有個人データの開示方法」など、多くの項目で規制が厳しくなり、内容も複雑化していると指摘。デジタル化が加速しているという背景からも、社内の関連部署が連携して対応するなど、個人情報保護へのよりキメ細かい情報セキュリティ実務が必要と締めくくりました。
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